日本の梅雨時の風景に、青や紫、ピンクの花をつけて風情を添えるあじさいの花。
中には白い色の花を咲かせる種類もあり、独特の存在感をたたえています。
アナベルは白色系のあじさいの一種ですが、北アメリカ原産で、一般的な日本のあじさいとは違った味わい方のできる花です。
この記事では、アナベルの基本的な知識を、日本産のあじさいとの違いを中心にお伝えし、白色だけでない改良品種についてもご紹介します。
また、その名前の由来や花言葉、ドライフラワーの楽しみ方などについても解説します。
興味を持たれた方はぜひ、お花屋や園芸店でアナベルの姿を探してみてください。
鉢に植えて育ててみるのも楽しいものですよ。
アナベルはアメリカ生まれの
あじさいの仲間
アナベルは紫陽花(あじさい)の仲間で、アジサイ科に属する落葉低木です。
ユキノシタ科に分類される場合もあります。
原産地は北アメリカで「アメリカアジサイ」という別名もあります。
野生種としては「アメリカノリノキ(ワイルドホワイトハイドランジア)」の名があり、これを園芸用に品種改良したものが現在の「アナベル」です。
6月から7月にかけ、萼(がく)が花弁のように発達した「装飾花(そうしょくか)」と呼ばれる小さな花が集まり、直径20〜30センチの丸い房状の「手毬咲き」となります。
花は秋まで咲き続け、長く楽しめます。
花の色は白が主流で「白いアジサイ」と呼ばれることもあります。
ピンク色のアナベルもよく見かけます。
花が咲き進むにつれ、花色は淡い緑色に変化していきます。
アナベルは、その名前の由来もユニークです。
次項でご紹介しましょう。
その美しさを語り継ぐ「アナベル」
という名のあじさい
「アナベル」という花の名には、その由来として3つの説が語り継がれています。
古代ローマの“愛すべき女性”から
古代ローマの言葉に「アマビリス」と「アマベル」があります。
どちらも“愛すべき”という意味を持っていますが、アマビリスは主に男性、アマベルは主に女性に使われた言葉です。
その可憐で美しい花姿からの連想で、いにしえのローマの“愛すべき女性”アマベルに由来する、
「アナベル」という花の名前が生まれたという説があります。
ちなみに「アマビリス」は胡蝶蘭の原種の名前になっています。
原種の発見地イリノイ州アンナから
アナベルの原種が発見されたのは、アメリカのイリノイ州にあるアンナという町でした。
その美しさはたちまち地域の評判になったといいます。
町の名前「アンナ」に、イタリア語などで“美しい”という意味がある言葉「ベラ」を合わせ、誕生したのが「アナベル」という名という説です。
亡き妻を想うポオの詩から
アメリカの小説家で詩人のエドガー・アラン・ポオの詩に「アナベル・リイ」があります。
この詩は、若くして肺の病で亡くなった妻ヴァージニアへ、ポオが想いを綴った作品とされ、ポオが生前に残した最後の詩にもなりました。
3つ目の説は、この詩に登場する美しい女性アナベル・リイにちなんで「アナベル」と命名されたというものです。
では、アナベルの特徴を、一般的な日本産のあじさいとの比較から見ておきましょう。
関連記事:アジサイの白い花が心を癒やす。その由来や品種について
旧枝咲きのあじさい、新枝咲きのアナベル
一般的なあじさいとアナベルとの大きな差異は「旧枝咲き」と「新枝咲き」の違いです。
ガクアジサイ、ヤマアジサイ、カシワバアジサイなどに代表されるあじさいは、前の年に伸びた古い枝に花をつける植物です。
これを「旧枝咲き」といいます。
一方、アナベルは「新枝咲き」です。
その年に伸びた新しい枝に花が咲きます。
旧枝咲きのあじさいは、枝の剪定に注意が必要です。
その時期や枝を間違えると花芽を落とし、花をさかせることができなくなってしまいます。
新枝咲きであるアナベルは、花が終わった後に剪定をしておけば、翌年は新しい枝に花が咲くので失敗することがあまりありません。
一般的なあじさいとアナベルとのもう一つの違いは、花房のボリューム感です。
どちらも装飾花が集まって花序(花全体)をこんもりと作りますが、あじさいに比べて薄く小さめの装飾花がたくさん密集するアナベルの方が、よりボリューム感のある花房を形成します。
また、楕円形の葉の形はよく似ていますが、あじさいの葉には光沢があるのに対して、
アナベルの葉の表面には毛があり光沢感は感じられません。
アナベルの特徴は、その花言葉にも表われています。
花言葉にも表われる
アナベルとあじさいの違い
一般的なあじさいは
「強い愛情」「一家団欒」「家族の結びつき」「元気な女性」などの花言葉を持つ一方、
「移り気」や「浮気」といったネガティブな花言葉も知られています。
これは、土壌の性質(酸度)によって花の色に違いが出るという、あじさい独特の性質ゆえです。
しかし白色系のアナベルには土の性質による花色の違いがありません。
酸度によって色の変わる色素をもともと持っていないのです。
アナベルの花言葉として「移り気」「浮気」が紹介されないのは、この性質ゆえかもしれません。
なお、アナベルには太陽光などの影響で咲き色が変化する品種もあります。
「ひたむきな愛」「辛抱強い愛情」。
アナベルの代表的な花言葉はこの2つです。
アナベルという名前の由来がどの説も、愛情や美しさといったイメージから出ていることからもわかるように、古くからこの花は愛や美の象徴でもあったのです。
また、ピンクのアナベルには「寛容な女性」という花言葉があります。
アナベルは品種も多彩!
人気の5種を紹介
人々に愛されてきたアナベルは、品種の開発も進められてきました。
ここでは、アナベルの代表的な人気品種をご紹介します。
アナベルコンパクト
樹高は30〜90センチ程度。最も小型のアナベルです。
花は純白から、成長につれて薄緑色や薄桃色を帯びてきます。
日向でも育てることができ、日焼けによる花色の変色もありません。
寒さに強く、霜が降りる頃まで花を楽しむことができます。
アナベルジャンボ
樹高は120〜150センチ程度。大型のアナベルです。
咲き始めは緑色の花で、やがて直径30センチほどもあるエアリーな白いふわふわの房になります。
その後ヒスイを思わせる淡い緑色の花となり、霜の頃まで長く咲きます。
日焼けによる変色もありません。
ピンクのアナベル
樹高は90〜120センチほど。
美しいピンクの花色が魅力です。
咲き始めの濃いピンク色は、咲き進むにつれ緑色へと変わります。
耐暑性も、耐寒性もともに高く、育てやすい品種です。
ピンクの色合いがより濃い「ピンクのアナベル2」という改良品種もあります。
ルビーのアナベル
樹高は90〜120センチ程度。
最も濃い赤色の花が咲くアナベルです。
濃い赤紫色の蕾(つぼみ)から、銀色を帯びたピンク色と明るいルビーカラーのバイカラーの花が咲く華やかな品種です。
ピンクのアナベルから品種改良されました。
ライムのアナベル
樹高は120〜150センチ。
中央はピンク色を帯びた、ライムグリーンの大きな花を咲かせます。
満開時には白色になり、また緑色に変化します。
強健な茎は倒れにくいので、ガーデニングに最適です。
定番の白いアナベル、そして色とりどりの新品種。
いずれもフラワーギフトに花としても人気です。
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フラワーギフトにも最適な
アナベルの花
「ひたむきな愛」という花言葉を持つアナベルは、結婚式の花として人気があります。
特に白い花色のアナベルは、清らかで優しさを感じられる花嫁のブーケに最適。
ブライダルシーズンの6月はアナベルが咲き始める季節でもあります。
アナベルで花束を作ると、とてもボリューム感のあるものになります。
眼にあざやかな白色で存在感のある花束を贈りたいならアナベルを中心にお花を選びましょう。
アレンジメントの花材としても、アナベルは人気の花です。
ピンクやルビー系の品種が華やかな彩りとなるでしょう。
ガーデニングが趣味の方には鉢ものをプレゼントしてはいかがでしょうか。
あじさいに比べて剪定が簡単ですし、年に一回の植え替えでアナベルは何年も花を楽しむことができます。
アナベルを素材としたリースやスワッグなどのインテリア小物もギフトとして人気があり、自分で作ることもできます。
特にアナベルのドライフラワーは手間がかからず、初心者でも簡単に作れることから人気があります。
次項では、アナベルのドライフラワーの作り方について解説します。
関連記事:紫陽花の花束はプレゼントに人気!花言葉・おすすめの渡し方も
ドライフラワーで楽しむアナベル
元来アナベルは水分をあまり多く含んでいないことから、ドライフラワーの花材に適しています。
こんもり丸い花姿を長く楽しみたいという理由からも、多くの方がドライフラワーに挑戦しています。
アナベル独特のボリューム感を残してドライフラワーにするには、迅速に乾燥させる必要があります。
そのため、材料のアナベルを入手するのは気温が高く乾燥が進んでいる夏から秋口にかけての時期が最適です。
最も基本的な作り方は「ハンギング法」と呼ばれるもので、余分な葉を取り除いたら直射日光の当たらない風通しのよい場所に逆さに吊します。
通常は1〜2週間ほどでドライフラワーになります。
乾燥が進むにつれ変化する花色を楽しみたいなら「ドライ・イン・ウォーター法」です。
容器に少量の水を入れアナベルを挿します。
水の蒸発に合わせ、生花の乾燥もゆっくりと進みます。
「シリカゲル法」は、花の形や色合いを生花に近い状態で仕上げることができます。
茎の部分はカットしたアナベルを、ドライフラワー用のシリカゲルを敷き詰めた容器に入れて密閉し、完成を待ちます。
親しい方へ、アナベルを自作のドライフラワーに仕上げてプレゼントしてみてはいかがでしょうか。
関連記事:失敗しないドライフラワーの作り方!インテリアにもギフトにも◎
あじさい「アナベル」のような
可憐なお花を花百花で
“ひたむきな愛”を象徴する白いあじさい「アナベル」。
その手毬咲きの美しい花は、春から初夏にかけて庭を鮮やかに彩ります。
その大きく、清楚な白い花は結婚式のシーンでもよく見かけ、切り花としてもそのまま楽しめるのが魅力です。
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また、アナベルのように新枝咲きで剪定に失敗が少ない植物でも、最良の開花を迎えるための栽培管理は多くの知識を要します。
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まとめ
白いあじさい「アナベル(アメリカアジサイ)」の特徴や名前の由来、日本産のあじさいとの違いや花言葉について解説しました。
また、人気の品種やドライフラワーの楽しみ方についてもご紹介しました。
古くから人はアナベルに、美しく愛すべき女性の姿を重ねてきました。
多くの改良品種が生まれたのも、より美しく、愛すべき存在としてその姿を追求してきたからにほかありません。
その道を、今も多くの園芸家が歩んでいます。
アナベルの花を贈られるときにはぜひ、たくさんの人の想いがつまった花であったことを思い出してみてください。