静岡の植物園で生まれたアジサイの園芸品種「ダンスパーティー」。
その名の通り、貴婦人のダンスを見るような華麗なアジサイです。
園芸愛好家には知られた存在ですが、一般にはまだまだ知られていない隠れた名品といってもいいでしょう。
この記事では、ダンスパーティーの特徴を知っていただくことでその魅力を伝え、興味のわいた方には苗からの栽培にも挑戦していただけるよう必要な知識を解説します。
ダンスパーティーを知る前に
覚えておきたいアジサイの基礎知識
梅雨時のお花と聞いて、日本人の脳裏にまず思い浮かぶのが「紫陽花(あじさい)」です。
原産地は日本。
アジサイ科アジサイ属に属する落葉低木の総称です。
日本の自生種である「ガクアジサイ」をルーツに世界各地で品種改良が進み、今では2千種類以上の品種があるとされています。
園芸品種の名称としての「アジサイ」は、ガクアジサイからの改良種全般の名称で、
「ホンアジサイ」と呼ばれることもあります。
また、ヨーロッパやアメリカでガクアジサイやアジサイから改良された多くの品種を総称し、日本では「ハイドランジア(西洋アジサイ)」と称しています。
アジサイ科の植物は、萼(がく)の部分が花びらのように発達する、「装飾花(そうしょくか)」という形の花をつけます。
装飾花は雄しべと雌しべが未発達で、種子ができません。
雄しべと雌しべを持つものは「両性花」と呼ばれます。
アジサイは多くの小さな装飾花と両性花が集合し、大きな一つ花序(花房全体)を形成する植物です。
両性花を中心に装飾花が周囲を囲むように咲いて花序を形成するものを「萼咲き」といいます。
ガクアジサイはこのタイプで、中央部に集まった両性花の周囲を装飾花が囲みます。
つまりアジサイ科は本来、萼咲きの植物であるといえます。
一方、品種改良によって誕生したハイドランジア系品種の多くは、装飾花だけでこんもりとした房を成す「手毬咲き」の植物です。
アジサイのもう一つの大きな特徴は、生育する土壌によって花の色が決まるということです。
ポイントは土の酸度(酸性度)の違いです。
アジサイはもともと赤色を呈するアントシアニンという色素を持っていますが、これは土中から溶け出たアルミニウムと反応し青色に変化します。
酸性が強い土ほどアルミニウムが多く溶け出し、花の色は強く青みを帯びます。
中間の酸度では紫色の花になるという仕組みです。
人はアジサイの性質に着目し、花の咲き方や色のバリエーションなど個性豊かな数々の品種を生み出してきました。
その一つに人気の品種「ダンスパーティー」があります。
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ガクアジサイの美しき進化!
優美なるダンスパーティー
「ダンスパーティー」は静岡県掛川市の「加茂荘花鳥園」で作出された、アジサイのオリジナル品種です。
同園で生み出された数々の園芸品種「アジサイ KAMOセレクション」の中でも、群を抜いて人気の名品です。
ダンスパーティーはガクアジサイの形質を受け継いでおり、両性花を装飾花が囲む花序を呈しますが、ガクアジサイに比べて装飾花の数が多く、また次第に花数が増えていく様子は見ごたえがあります。
その花序は、萼咲きというには装飾花の存在感が大きく、「半手毬咲き」ともいわれます。
小花のフォルムは星形でシャープな印象。
萼片が幾重にも重なる八重咲きです。
優雅なその花姿は舞踏会で踊る貴婦人を連想させ、名前の由来となりました。
花の色は土の酸度によって振れ幅が大きく、基本的には紅色系ですが、濃いピンクから淡い青色まで縦横に変化します。
ダンスパーティーには「ダンスパーティーハッピー」という派生品種もあり、濃い鮮やかな花の色が特徴です。
葉の緑色も濃く、花色とのコントラストを楽しむことができます。
「加茂荘花鳥園」は庭植えもできるアジサイの開発に定評があり、ダンスパーティーについても鉢物だけでなく庭植えにも適した品種として知られています。
では、ダンスパーティーを育てて楽しむには、どのような方法や注意点があるでしょうか?
アジサイを楽しむ!
ダンスパーティーの育て方
ダンスパーティーは耐暑性も耐寒性も高く、育てやすい植物です。
基本さえ抑えておけば、ガーデニングの初心者でも苦にはならないでしょう。
栽培環境
アジサイは日陰でも栽培しやすい植物ですが、ダンスパーティーは日照が不足すると花つきが悪くなるので、日当たりのよい場所を選びましょう。
前述のように、土の酸性度によって発色に違いが出ます。
特定の花色をめざすなら、苦土石灰や鹿沼土、ピートモスなどを加えることによって土壌酸度を調整します。
希望の花色を伝え、園芸店などで相談しておくとよいでしょう。
乾燥には弱いので、湿り気の多い土壌が望まれます。
植え付け・植え替え
ダンスパーティーを種から育てるのは一般的ではありません。
通常は、頂いたり、園芸店やネット通販で購入した苗を植え付けることから始めます。
適期は落葉後の休眠期にあたる12月から3月にかけてです。
地植えの場合、大きく育つことを考慮して、広めのスペースを確保しておいてください。
鉢植えでは根詰まりを防ぐため、年に一度をめやすに、大きな鉢に植え替えます。
水やりと肥料
植え付けた苗が根づくまで2?4週間ほどかかります。
この間はたっぷりと水を与えます。
その後、地植えの場合は、乾燥が続く夏場に水やりをこころがけ、それ以外は自然の雨水で問題ありません。
鉢植えの場合は、表土が乾いたら十分に水をあげてください。
肥料は、3月頃に骨粉や魚粉を混ぜて与えます。
春からの成長を促し、花色を鮮やかにする効果が期待できます。
開花前には、油粕などを追肥します。
花後の追肥は必要ありません。
剪定
ダンスパーティーは6月から7月にかけて開花します。
花が終わったら剪定をします。
剪定はアジサイ育成の絶対要件ではありませんが、剪定によって木姿や大きさを調整することができ、新梢の生育もよくなります。
次のシーズンにより美しい花を咲かせるためはぜひ実施しておきたい作業です。
剪定は、花後の枝の上から2節目を目安に、形の悪い枝なども合わせて刈り込みます。
できれば7月中には終えておきましょう。
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冬越し
ダンスパーティーは元来、耐寒性の強い品種なので、特別な冬越し対策は必要ありませんが、鉢植えの場合は乾燥した冷気が当たらないようにします。
必要なら場所を移動しましょう。
雪の多い地域で地植えする場合は、雪の重みで枝が折れないよう地域の降雪状況に合わせた対策をお願いします。
アジサイを楽しむ!
ダンスパーティー栽培の注意点
ダンスパーティー栽培のポイント、注意点をまとめておきます。
ダンスパーティーは日向を好みますが、夏の直射日光は強すぎて乾燥が進んでしまいます。
鉢植えならば置き場所の移動によって日照を調節しましょう。
西日も避けたいところです。
鉢植えでは、土が乾燥しないよう継続的な水やりが必要となりますが、その際、受け皿に水がたまったまま放置しないよう注意してください。
植え付け・植え替えの適期は冬場の休眠期となりますが、土が凍りつくような厳寒時には避けたほうがよいでしょう。
温暖な地域では問題ありません。
秋に入ってからの剪定は避けましょう。
秋は、ダンスパーティーが来年の花芽を作る時期に入ります。
剪定が遅れると花芽を失う可能性があり、次の花つきが悪くなります。
また、花が咲かなかった枝は剪定せずに残しておきましょう。
アジサイは剪定してから2年目に花をつける周期を持っています。
今年花がつかなかった枝は、来年は咲く可能性が高いのです。
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まとめ
アジサイの人気品種「ダンスパーティー」の特徴やその育て方を解説しました。
日本の固有種ガクアジサイの形質を受け継ぎながら、アジサイ特有の装飾花の美しさの追求から生まれたオリジナルアジサイの傑作、それがダンスパーティーです。
踊るような華やかさを観賞するのはもちろん、苗からの栽培もそれほど難しくはなく、
剪定した枝を挿し木にして増やすといった楽しみ方もできます。
ぜひ、いろいろなアプローチで、ダンスパーティーの魅力に触れてみてください。
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