2023/04/02

人気のアジサイ新品種「万華鏡」。その由来や特徴など解説

古くは「万葉集」にも詠まれた紫陽花(あじさい)の花。
日本原産の植物でもあり、日本の文化に深く根ざした心の花です。

鎖国時代の日本に滞在したドイツの医師で博物学者のシーボルトが、アジサイを愛した女性お滝さんになぞらえ「オタクサ」と呼んだように、西洋の人々にもアジサイの美しさは共感され、大切にされてきました。

現代においてもアジサイへの人の想いは強く、各地で新種のアジサイが育成されています。
中でもトップクラスの人気を誇っているのが島根県の生んだ新品種「万華鏡」です。
市場へのデビューは2012年というまだ新しい品種ですが、その人気はうなぎ上りです。

この記事では、万華鏡という花の特徴や由来などを解説していきます。

愛すべきアジサイ「万華鏡」の
誕生とその美しさ

「万華鏡」とはどのような花なのでしょうか。
まずはルーツにあたる2種のアジサイからご紹介します。

「ガクアジサイ」と「ハイドランジア」

アジサイ科アジサイ属に属する落葉低木は一般に「紫陽花(あじさい)」と呼ばれる、日本原産の植物です。
その原種を「ガクアジサイ」といいます。
園芸名としての「アジサイ」はガクアジサイが元となった品種の名称で、ガクアジサイとの違いを明確にするために「ホンアジサイ」と呼ばれることもあります。

ガクアジサイは房総半島、三浦半島、伊豆半島の限られた海岸部や伊豆諸島、小笠原諸島などの一部に自生しており「ハマアジサイ」とも呼ばれます。

アジサイの仲間は、萼(がく)の部分が大きく発達して花びらのように見える、「装飾花(そうしょくか)」という形態の花をつけます。
ガクアジサイの花序は、粒状の「両性花」を中心に「装飾花」が額のように周辺部を縁取って咲きます。
その様子から「ガクアジサイ」の名がつけられました。
ガクアジサイから改良されたアジサイ(ホンアジサイ)は、花序(小花が集合した花の全体)のすべてが装飾花の集まりで額のようには見えません。
丸い房状となるその咲き方は「手毬咲き」と呼ばれます。

日本のアジサイは江戸期以降、欧米の人々にも知られる存在となり、またフランスやアメリカなどで品種改良も進みました。
それらの改良種は大正期以降、日本に逆輸入される形になり「西洋アジサイ」や「ハイドランジア」と呼ばれることになりますが、元をたどれば日本固有の「ガクアジサイ」が起源です。

なお「ハイドランジア」にはラテン語で“水の器”の意味があり、雨の季節に花を開く様子が水を受け止めるものに、あるいはたっぷりと水を吸収する様子が水を蓄えるものに例えられたようです。
また「あじさい」の名は“藍色が集まったもの”を意味する古語、「集真藍(あづさあい)」に由来するとされています。

万華鏡の誕生

ガクアジサイの園芸品種の一つに「隅田の花火(スミダノハナビ)」があります。
花序の周辺部を彩る装飾花が八重に咲くのが特徴で、装飾花の軸がやや長く、星形の花が飛び出すように見えるその姿は文字通り、江戸からの伝統である隅田川の花火を思わせるものです。
花色は白が主で、土壌の違いによってうっすらと青、又はピンクが入ります。

ハイドランジア(西洋アジサイ)の改良品種に「ミセスクミコ」があります。
群馬県の園芸家、坂本正次さんが作出したアジサイで、坂本さんの愛妻の名前から名付けられました。
柔らかな切れ込みのある濃い桜色の装飾花が大輪の手毬となって咲く美しい品種で、“花のオリンピック”とも称される「世界園芸博覧会(1992年オランダ)」では金賞を受賞し一躍脚光を浴びました。

「万華鏡」は、隅田の花火とミセスクミコの交配によって誕生した品種です。
生まれは山陰地方の島根県。
2005年頃から県オリジナルのブランド品種の開発が進められ、県農業技術センターによって隅田の花火とミセスクミコを元に、改良を重ねて作出されました。
その過程で交配によって生まれた品種はおよそ2万種あり、選び抜かれた1種が万華鏡です。
出荷が開始されたのは2012年。
以来、島根県アジサイ研究会の生産農家が手塩にかけて育成を続け、今や全国的な人気ブランドになっています。

島根県が威信をかけて生み出したアジサイの新品種「万華鏡」には、どのような特徴があるでしょうか。

万華鏡の特徴

咲き方は花房全体が装飾花の集合体である「手毬咲き」で、青かピンクの花が八重に咲きます。
一つ一つの花は小ぶりで先端が尖った繊細な形をしています。
それらがぎゅっと密に折り重なって咲き、ふわりと優しく、しかも存在感のある手毬の姿になります。

花の色は、内側から外に向けてだんだんと淡くなるのが特徴で、独特のグラデーションの美しさは人の目をひきつけてやみません。
きらびやかな花色と折り重なって咲く様子は、まさに万華鏡を覗いたときの光景です。
その名は公募によってネーミングされました。

また葉が小さめで、草丈も伸びにくいことが、鉢物用としてのバランスのよさを生んでいます。

万華鏡は、国内最大規模の花の新品種コンテストである、「ジャパンフラワーセレクション2012-2013」の「鉢物部門」で「フラワー・オブ・ザ・イヤー(最優秀賞)」を受賞しています。

関連記事:アジサイの白い花が心を癒やす。その由来や品種について

島根が生んだ華麗なるアジサイの系譜
万華鏡の姉妹たち

万華鏡の誕生後、島根県は個性豊かなアジサイの新品種を次々生み出しました。
いずれも好評で、今や島根県はオリジナルアジサイの聖地ともいえる存在となっています。

万華鏡を含め、現在、花卉市場には5種の島根県産オリジナルアジサイが出回っています。
ここでは長女の万華鏡に続いて世に出た4種の姉妹品種をご紹介します。

美雲

万華鏡に続いて誕生したのが「美雲(みくも)」です。
2013年に出荷が始まりました。
八重咲きで、ふんわりと湧き立つ雲のような花姿が名前の由来となりました。
花色は青とピンクですが、特に「グレーブルー」と呼ばれる青は従来のアジサイにはない独特の色合いです。
「ジャパンフラワーセレクション」(鉢物部門)では入賞を果たしています。

銀河

出荷開始は2017年。三女の「銀河」です。
装飾花が周辺部を縁取るガクアジサイ由来の特徴を備えています。
装飾花の花びら(萼片)は濃いめの青い大輪の八重咲で縁に白いラインが入ります。
その姿が星々を散りばめた銀河を連想させることから名付けられました。
中央部の両性花は咲き進むと白く雲のように盛り上がり、外側の装飾花に代わって存在感を示します。
花全体が宇宙の神秘を感じさせてくれる美しいアジサイです。
万華鏡に続き「フラワー・オブ・ザ・イヤー(最優秀賞)」の受賞花となりました。

茜雲

「茜雲(あかねぐも)」は2020年から出荷されています。
多花性で、小花(装飾花)の一つ一つは4〜5枚の花弁を持つ小輪の一重咲き。
それらがコンパクトに密集した手毬咲きです。
小ぶりなので鉢で育てるのに向いており、花粉が少ないことから室内でも楽しむことができます。
花色は夕焼けの空を想わせるピンク系(茜色)で、開花初期の淡い色合いからだんだんと濃くなります。
「ジャパンフラワーセレクション」(鉢物部門)の入賞花です。

星あつめ

2021年のデビューというたいへん最新品種です。
花房は小ぶりで、草丈も低いコンパクトな手毬咲き。
一番の特徴は、青またはピンクの小花が、まるで星々がきらめくようにそれぞれ別のタイミングで色づいていくという、独特な花色の変化にあります。
従来品種のように一斉に色づくことはないので、色づき前の鮮やかな緑色とのコントラストを楽しむことができます。
「ジャパンフラワーセレクション」(鉢物部門)で入賞。
新しい価値観を感じさせる品種であると高く評価され「ニューバリュー特別賞」も同時受賞しました。

島根県出雲市にあるフラワーパーク「しまね花の郷」では、島根が誇るオリジナルアジサイのラインナップ全5種を観賞することができます。

母の日ギフトにも最適な
アジサイ「万華鏡」

母の日のお花といえばもちろんカーネーションが定番中の定番ですが、品種によっては開花時期を調整して時期を合わせるなど生産者の努力もあり、近年アジサイを母の日ギフトにする方が増えています。

その中でも万華鏡は人気が高く、島根では「母の日にはブルーの万華鏡」が新定番として定着しつつあるといいます。

アジサイの花言葉には「強い愛情」「一家団欒」「家族の結びつき」「元気な女性」などがあり、母の日にふさわしいひと品となります。
花言葉と共に、お母さんへ感謝の想いを綴ったメッセージカード付きで、万華鏡を贈ってみてください。

関連記事:母の日プレゼントにはお花のギフトがおすすめ!お花の贈り方特集

アジサイ「万華鏡」のように華やかに、
季節を彩るフラワーギフトを簡単注文

日本の梅雨の美しさを体現するアジサイ。
今、注目の品種「万華鏡」は、島根県で生まれたアジサイの新星です。
その繊細なグラデーションカラーが、庭やベランダを一層明るい空間に変えてくれるでしょう。
今後は「母の日にはブルーの万華鏡」が新たな定番として、多くの人々に愛されるようになるかもしれません。
その他にも、美雲、銀河、茜雲、星あつめといった姉妹品種もおすすめです。

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まとめ

今やオリジナルアジサイの世界では主役級の存在となっている「万華鏡」。
その姉妹品種も含め、日本中のお花好き、アジサイ愛好家から愛されています。

今回は、万華鏡が誕生するまでのアジサイの歴史や、花の特徴にちなむ万華鏡の名の由来、「美雲」から「星あつめ」に至る姉妹品種についても詳しくお伝えしました。

島根県はもとより、日本が誇るアジサイの新品種です。
花屋や園芸店で気になる万華鏡の一品に出会ったら購入し、ぜひ身近において楽しんでください。
そして次の母の日には、カーネーションの花束と一緒に万華鏡の鉢植えを贈られてはいかがでしょうか。

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