「お葬式で見かけるあの花は何と呼ぶ?」
お通夜や告別式ではさまざまな花が用いられていますが、お葬式の最も代表的な花は「供花(きょうか)」です。供花は参列者から贈られ、式場の祭壇上や祭壇の脇に飾られる花です。
お葬式でお供えされる花は、供花の他にもあります。故人の枕元に飾る「枕花(まくらばな)」や式場の外に飾る「花輪(はなわ)」などです。
本記事では、お葬式でお供えする花の種類や、菊やユリなどのお供えに良く使われる8つの花を紹介します。
お葬式後の法要に贈ると喜ばれる花もお伝えします。これから式に参列される人も、式に参列したあとの人も参考にしてみてください。
お葬式の花の名前は?4種類の花を紹介
お葬式にまつわる代表的な花は次の4種類です。
- 供花(きょうか)
- 枕花(まくらばな)
- 花輪(はなわ)
- 献花(けんか)
どれも故人に贈る花ですが、贈られる意味や誰がいつ贈るかは違います。それぞれの特徴を知って、違いがわかるようになりましょう。
祭壇や祭壇の脇に飾られる「供花(きょうか)」
葬儀会場の正面には、遺影写真やお供え物を置く壇が設置されます。その壇を祭壇と呼びますが、祭壇の上や祭壇の脇に飾られる花を「供花(きょうか)」と言います。
宗教や地域による違いはありますが、供花は白を基調としたものが基本です。メインに白い菊やユリをすえて、サブに薄ピンクや薄紫の花を使ったものがよく選ばれます。
供花によく用いられる形式は、活けた花が花瓶やかごに入っている「アレンジメント」や脚の長い台に花が飾られている「スタンド花」です。
花の形式には決まりはありませんが、届いてすぐに飾れるアレンジメントやスタンド花は、遺族に負担をかけないため定番となっています。
供花に名前や会社名が書かれた札がついているのを見たことがある人も多いのではないでしょうか?その札は「立札」と呼ばれ、供花の贈り主がわかるように付けられます。
立札を見ると、供花が会社関係者や友人、親族などのさまざまな人から贈られていることからわかるように、供花は参列者なら誰でも贈れる花です。
遺族にも喜ばれるものなので、お悔やみの気持ちを伝えたい人や、故人ととくに仲が良かった人はぜひ贈ってみてください。
供花は葬儀社に依頼すれば手配できます。担当の葬儀会場の名前と、葬儀日時、喪家の名前を伝えるだけなので簡単です。
葬儀社にもよりますが、一般的な花屋で買った花を供花として届けることもできます。故人のためにこだわって選びたい人は、自分で選んだ花を供花として贈るもの良いでしょう。
供花はお通夜の前、遅くとも告別式の前までに届ける必要があります。葬儀社に依頼する場合も、自分で購入する場合も早めに手配に取りかかるようにしましょう。
供花の相場は1つ7,000円から15,000円です。近親者なら供花を2つ贈ることもあり、その場合の相場は14,000円から30,000です。
1つの供花を友人や仕事の同僚と一緒に贈ることもできます。供花を贈りたいときは、式の案内を受けた知人と相談してみると良いでしょう。供花を一人で贈るのが心細い人も、知人と一緒なら贈りやすいですよ。
臨終から通夜後まで故人の枕元に飾られる「枕花(まくらばな)」
臨終からお通夜が終わるまでの間、故人の枕元に飾られる花を「枕花(まくらばな)」といいます。
枕花は自宅から式場に移動するときも飾られたままです。そのため、「供花(きょうか)」よりも小さなサイズの花が枕花として贈られます。
枕花の形式は「アレンジメント」。アレンジメントとは、水を含むスポンジに花を活けたフラワーギフトです。
枕花を贈るのは、血縁者のような故人と特に深い仲にあった人が基本。
前項で紹介した供花とは少し異なり、枕花は誰でも気軽に送るようなものではないという点には注意が必要です。
枕花は一般的な生花店で購入して、故人の自宅か、遺体が安置所にある場合は安置所へ送ります。どこに届けるかは葬儀社に確認しておくと良いでしょう。
枕花には色についてのマナーもあります。マナーは地域によって変わりますが、白一色か白を基調として薄い色を加えたものが好ましいとされています。
迷った場合は定番の白一色を選ぶのがおすすめです。
枕花の相場は、5,000円から10,000円です。故人との関係の深さも考慮して、大きすぎないものを選びましょう。
葬儀会場の外部に飾られるスタンド式の「花輪(はなわ)」
葬儀会場の入口などに飾られるスタンド式の花を「花輪(はなわ)」といいます。花輪は円状に花を並べた上部とスタンド部分によりできています。
花輪は1メートルから3メートルの高さで、他の葬儀の花とは違い式場外部に飾られるお花です。
店舗の開店や開業を祝して贈られることもある花輪ですが、葬儀では故人へのお悔やみの気持ちを込めて贈られます。
花輪を手配したい場合は、担当の葬儀社に依頼するのが基本。相場は、10,000円から20,000円と少々根が張ることも念頭において選びましょう。
ちなみに、花輪は飾るスペースの確保が難しいことから、受け取りが遺族に辞退されるケースも最近では少なくありません。そのため、まずは遺族が辞退しているかどうかを葬儀社に確認しておくと安心でしょう。
葬儀の参列者が一本ずつ台にお供えする「献花(けんか)」
「献花(けんか)」とは、告別式中に参列者が花を捧げる儀式のことです。儀式で捧げる花のことを献花と呼ぶ場合もあります。
献花は主にキリスト教の葬儀で行われる、故人と最後の別れの儀式です。仏教の焼香と同じように、参列者一人ひとりが花を捧げていきます。
献花によく使われるのは、白いカーネーションや白い菊で、献花用の花は喪主が用意します。参列者が持参すると、むしろ遺族に迷惑をかけてしまう可能性もあるので、持参しないようにしてください。
献花のある葬儀に参列するなら、基本的な情報を事前に知っておきましょう。献花は一人ずつ行います。やり方を知らないと、自分に順番が回ってきたときに焦ってしまいます。
宗派や地域による違いはありますが、献花の基本的な手順は次の通りです。
- スタッフから花を両手で受け取る
- 遺族に一礼して祭壇の前まで進む
- 故人に向けて一礼する
- 花を献花台に置く
- 2、3歩下がって祭壇へ一礼する
- 神父や遺族に一礼して席へ戻る
失礼のない献花ができるように頭に入れておいてください。
関連記事:お葬式にまつわる4種類の花|枕花・供花・献花・花輪を解説
お葬式でよく使われる花は?
お葬式でよく使われる、次の8つの花を紹介します。
- 菊
- ユリ
- カーネーション
- デルフィニウム
- トルコギキョウ
- 水仙
- デンファレ
- プリザーブドフラワー
それぞれの特徴を簡単に見ていきましょう。
菊
葬儀の花として最も目にする機会が多いのは菊です。白い菊はメイン、黄色や紫色の菊はサブに用いられます。
菊がよく使われる理由は、日持ちする点や高貴な印象がある点があげられます。また、「邪気を払い寿命を延ばす効果がある」と考えられていたことも、菊が定番になっている理由でしょう。
花選びで迷った場合は、定番の菊を用いるのがおすすめです。仏花として馴染みのある菊なら、宗教や地域の慣習を気にしている遺族にも喜んで受け取ってもらえるでしょう。
白いユリ
白いユリは白菊の次によく使われる花です。ユリは日持ちしてくれる点や香りが良い点から供花や枕花として使われます。
大きな花びらもユリの魅力で、ユリを加えることで、供花全体の印象が華やかになります。
花持ちの良さや心地よい香り、華やかな見た目など魅力の多いユリですが、一方で花粉が多く、参列者などの衣服を汚してしまう恐れがあります。
そのため、ユリを贈るなら、事前に花粉を取り除いておきましょう。ユリの花粉は花を購入するお店にお願いすれば取ってもらえますよ。
白いカーネーション
母の日のプレゼントによく用いられるカーネーションは、葬儀でも使われます。カーネーションは、暑い時期でも花持ちが良いためです。
とくに白いカーネーションは「亡き母をしのぶ」という花言葉を持つことから、母や女性の故人によく贈られます。
また、カーネーションは献花用の花としてキリスト教の葬儀でもよく用いられます。
白いカーネーションは菊やユリと並んで葬儀の定番の花です。さまざまなシーンで使われるので、花選びで迷っている人はカーネーションを取り入れてみてはいかがでしょうか。
デルフィニウム
「デルフィニウム」は5月から6月に咲く花です。花の形が空を飛ぶつばめに見えることから「大飛燕草(おおひえんそう)」とも呼ばれることもあります。
デルフィニウムがよく使われるのは、供花に薄いブルーを加えたいときです。
同じ季節に咲く「カサブランカ」や「アンスリウム」と一緒に使われることもあります。
トルコキキョウ
白や紫、ピンク、クリーム色など、さまざまな色の花を咲かせる「トルコキキョウ」も、お葬式の供花によく使われる花です。
供花の色は白を基調として、薄いピンクや紫を加えたものが一般的です。カラーバリエーションが豊富ならトルコキキョウを白い菊と一緒に使えば、バランスの良いまとまった印象の供花になります。
水仙
水仙は11月から4月にかけて咲く花です。
花びらの白と中心部の黄色のコントラストが特徴的な水仙を取り入れれば、明るい印象の花になります。水仙には香りが強いという特徴もあり、供花や枕花によく使われます。
水仙がとくによく用いられるのは春です。水仙は明るい見た目と香りから、花に春らしさをプラスしてくれます。春らしさが感じられる花にしたいときは水仙を取り入れると良いでしょう。
デンファレ
「デンファレ」は5月から10月の開花時期になると咲く花です。たくさんの花びらをつけるデンファレは、アレンジメントにボリュームを加えてくれます。
デンファレはピンクや白、紫、黄色など、さまざまな色の花を咲かせます。また、デンファレは日持ちが良い花です。その特徴から供花によく用いられます。
プリザーブドフラワー
「プリザーブドフラワー」とは花の品種ではなく、生花に特殊な加工を施したフラワーギフトの総称です。造花と違って生花を元にして作るプリザーブドフラワーなら、生花ならではの華やかな見た目を数年間楽しめます。
季節にかかわらず故人が好きだった花を届けられるのもプリザーブドフラワーの魅力です。
ただし、宗教や地域によっては、プリザーブドフラワーは供花にふさわしくないと考えられることもあります。そのため、プリザーブドフラワーを贈りたい場合は、遺族に確認しておきましょう。
関連記事:お供え花として贈りたいアレンジメントの選び方をシーン別に解説
お葬式が終わったら花はどうする?持ち帰れる?
お葬式でお供えした花の片付け方法は、地域や遺族の考えによって変わります。「葬儀の花は持ち帰らず処分すべき」と考えることも、「葬儀の花は持ち帰っても問題ない」と考えることもあります。
花を持ち帰るべきでないとする理由の一つは、「花を持って帰るのは、個人の魂を持って帰ること」と考えるためです。また、「故人に贈られた花を持ち帰るのは良くない」と考える人もいます。
一方で、「せっかくきれいに咲いているのだから、処分してはもったいない」と考えて、遺族や式場のスタッフが参列者に花を配るケースもあります。
葬儀の花を持ち帰れるかは、葬儀社へ確認してみると正確です。気になる場合は確認してみると良いでしょう。
お葬式で花を送ったらお返しがある?原則ありません
お葬式の花に対してお返しがあるかどうかは、遺族の考え方しだいです。
お葬式の花に対するお返しは、原則不要と考えられています。お葬式の花はお悔やみの気持ちを伝えたい参列者が、任意で故人に贈るものだからです。
しかし、「お返しをしないのは礼儀を欠く」と考える遺族もいます。遺族が「お返しはすべき」と考える場合は、供花の3分の1から半分の金額で食品や日用品が届けられることが多いです。
お葬式の後の法要で飾る花もある
ここまでお通夜やお葬式の花を解説してきましたが、花は葬儀後の法要でも贈られます。
葬儀後はさまざまな法要がありますが、ここでは「初七日(しょなのか)」と「四十九日(しじゅうくにち)」、「一周忌(いっしゅうき)」に贈られる花を紹介します。
「初七日(しょなのか)」の法要で贈る花
「初七日(しょなのか)」とは、命日から七日目に行われる法要です。初七日は葬儀と一緒に行われることも多いですが、葬儀の後日に催される場合は、葬儀とは別で花が贈られます。
初七日に贈られる定番の花は、白一色で作られたアレンジメントです。初七日に贈る花は基本的には「枕花(まくらばな)」と同じと考えて問題ないでしょう。
花屋で購入して、法要の前日か前々日に届けてもらうよう依頼しましょう。
「四十九日(しじゅうくにち)」の法要で贈る花
「四十九日(しじゅうくにち)」とは、命日から49日目に行われる法要です。
四十九日の法要では、白に淡い色を加えた花が選ばれます。白にプラスする色には特に指定はありません。故人が好きだった色・季節らしさが感じられる色を取り入れてみてください。
花の形式は、受け取った遺族がすぐに飾れるようにアレンジメント形式を選ぶと良いでしょう。
花の購入方法や届け方は「初七日(しょなのか)」に贈る花と同じです。生花店でふさわしい花を購入して、法要の前日か前々日に花を届けてもらいます。
「一周忌(いっしゅうき)」の法要で贈る花
「一周忌(いっしゅうき)」とは、故人が亡くなってから1年後の命日に行われる法要のことです。
一周忌には、「四十九日(しじゅうくにち)」に贈る花のように白に淡い色を加えた温かみのあるアレンジメントが好まれます。遺族の気持ちが安らぐようなアレンジメントを贈ってみてください。
一周忌の花も一般的な生花店で購入して、法要の前日か前々日に届くよう手配します。
一周忌の法要は基本的に故人の命日に行われますが、遺族の都合により日程が変わることもあります。花屋に花のお届け日を伝えるときは、法要の日程をしっかり確認しておきましょう。
関連記事:四十九日までの祭壇に供える花のマナー|適切な色や花の種類を紹介
関連記事:四十九日に必要な花とマナー|お寺と自宅のふたつの場合に分けて紹介
お葬式にまつわる花には、祭壇脇に飾る「供花(きょうか)」や故人の枕元に飾る「枕花(まくらばな)」、法要時に贈る花など、さまざまな種類があります。
式に参列予定のある人や式を終えた人は、菊やユリなどの定番の花を選んで、大切な故人にお悔やみの気持ちを贈ってみてください。
大切な人たちに囲まれて、美しいお花で満たされる最後の門出は、この世での生を終えるセレモニーにふさわしいはずです。
関連記事:お通夜の花は誰がどう手配する?「供花」のマナーや選び方を解説