2023/04/02

ユリの花は種類が豊富!日本の原種から広がった世界のユリ

ユリはその美しい姿と優雅な香りで、古くから人々の心を癒してきました。
品種改良のおかげもあり、今ではさまざまな種類のユリを楽しむことができます。

贈り物としてもたいへん人気があり、結婚式や誕生日などのプライベートなシーンだけでなく、ビジネスなどのフォーマルなシーンで、またガーデニングでもユリは欠かせない存在です。

日本はユリの在来種や固有種の宝庫です。
現在、世界中で親しまれているユリの園芸品種の多くが、日本のユリを発祥としていることをご存知でしょうか?
ユリの品種としては最も人気のあるカサブランカも、日本のユリの子孫です。

このページでは、ユリに関する基礎知識をお伝えするとともに、ユリを原種(野生種)と交配種(園芸品種)に分類。
日本の代表的な原種についても解説することで、ユリという花への理解を一歩深めていただくことをめざしました。

贈り物やガーデニングでユリを選ぶ際の参考になれば幸いです。

ユリについての基礎知識。
世界に広がる130種類

「ユリ」と名の付く花はたくさんありますが、分類上「ユリ(百合)」と正式に呼ばれるのは「ユリ科ユリ属」の球根植物だけです。
この記事でも「ユリ科ユリ属」の花について解説しています。

ユリはアジアの北半球地域を中心に世界各地に分布しています。
現在、100種を超える原種が確認されており、交配品種を含めると約130種類のユリが存在しています。
日本は、多くの固有種を含めて15種類のユリが自生する、世界的にもユリの宝庫として知られる国です。

品種にもよりますが、一般的にユリの開花時期は5月から8月頃。
花びらは6枚あります。
正確には、外側の3枚は萼(がく)が色づいたもので、本来の花びらは内側の3枚です。
それぞれ「外花被(がいかひ)」「内花被(ないかひ)」と呼ばれます。

「ユリ」という名前は、風によって花が「揺り」動く様子から、とも、鱗状の葉の一種(鱗片)が「寄り」集まって球根(鱗茎)になっているから、ともいわれています。
「百合」という漢字も、たくさんの鱗片が集まった様子を表わしています。

それでは、多彩なユリの品種を「原種(野生種)」と「交配種(園芸品種)」に分けて整理しておきましょう。

ユリの種類を分類する。
− 原種(野生種)4系統 −

植物の分類には研究者による見方の違いもあり、さまざまなタイプがあります。

ここでは、「原種(野生種)」を4系統に分けるユリの分類をご紹介します。

  • テッポウユリ亜属
  • ラッパのような筒状の花が横向きに咲くのが特徴で、アジアに多い系統です。
    テッポウユリの他、ササユリ、タカサゴユリ、オトメユリ、リーガル・リリーなどがこの系統の代表です。

    • ヤマユリ亜属
    • 漏斗状の花が横向きに咲きます。
      大輪の花を咲かせるという特徴があります。
      ヤマユリの他、サクユリなどがこの系統に属します。

      • スカシユリ亜属
      • 盃状の花が上向きに咲くのが特徴です。
        世界的に広く分布しています。
        スカシユリ、エゾスカシユリ、ヒメユリなどが代表的な品種です。

        • カノコユリ亜属
        • 花弁が反り返り花は下向きに咲き、たくさんの花が開く多花性の性質があります。
          カノコユリの他、オニユリ、マルタゴン・リリーなどがこの系統の代表です。

          ユリの種類を分類する。
          − 交配種(園芸品種)8系統 −

          原種からの交配で作出された「交配種(園芸品種)」を8系統に分けるユリの分類をご紹介します。

          • アジアティック・ハイブリッド
          • エゾスカシユリ、ヒメユリ、オニユリなど、アジア原産のユリを元に交配された品種の系統で、「スカシユリ系」とも呼ばれることもあります。
            香りは弱く、花は上向きに咲きます。
            エンチャントメント、コネチカットキングなどの品種があります。

            • マルタゴン・ハイブリッド
            • タケシマユリとマルタゴン・リリーの交配種で、花びらが反り返り、花は下向きに咲きます。
              日本ではあまり一般的ではない系統です。

              • キャンディダム・ハイブリッド
              • マドンナ・リリーを中心に、マルタゴン・リリーを除くヨーロッパ原産種を掛け合わせた系統です。
                日本で栽培されることは稀です。

                • アメリカン・ハイブリッド
                • 主に北アメリカ原産のユリを元に作出された系統です。
                  大輪の花が反り返り丸くなります。
                  庭植えのユリとして人気がありますが、日本では一般的でありません。

                  • ロンギフローラム・ハイブリッド
                  • 日本原産のテッポウユリと台湾原産のタカサゴユリから生まれた系統で、「シンテッポウユリ」とも呼ばれます。
                    花は横向きに咲きますが、上向き咲きに改良されたライザンやオーガスタといった品種もあります。

                    • トランペット・オーレリアン・ハイブリッド
                    • リーガル・リリー、キカノコユリ、テッポウユリなどが元になっています。
                      花の咲き方は筒状の他品種によってさまざまです。
                      最初の品種が生まれたフランスのオーレリアン地方にちなんで名づけられました。

                      • オリエンタル・ハイブリッド
                      • 日本原産のヤマユリやササユリ、カノコユリを中心に、交配、改良によって生まれた品種群で、「ユリの女王」とも呼ばれるカサブランカはこの系統です。
                        大型で優雅な花姿や芳香が魅力ですが、病気に弱い品種もあります。

                        • その他の交配種
                        • ロンギフローラム・ハイブリッドと、アジアティック・ハイブリッドから生まれた「LAハイブリッド」、ロンギフローラム・ハイブリッドと、オリエンタル・ハイブリッドから生まれた「LOハイブリッド」、トランペット・ハイブリッドとオリエンタル・ハイブリッドから生まれた「TOハイブリッド」などがあります。

                          日本原産のユリ「代表的6種類」。
                          その特徴を解説

                          日本は原産種(固有種)のユリの宝庫です。
                          そのうち代表的な6種を紹介します。

                          ヤマユリ

                          その名のとおり山間部に自生するユリです。
                          本州が原産ですが、北海道から九州まで日本各地に自生しています。
                          大きな白い花を咲かせ、花びらには黄色い筋と褐色の斑点が入ります。
                          その美しい姿は古くから人々を魅了し、「ユリの王様」と呼ばれることもあります。
                          強い香りも特徴です。
                          「荘厳」「飾らない愛」などの花言葉も知られています。

                          ササユリ

                          葉が笹に似ていることから「笹百合」と呼ばれます。
                          伊豆より西の本州、四国、九州の森林や山地に自生し、淡いピンク色の清楚な花を咲かせます。
                          “日本のユリ”を意味する、「Lilium japonicum(リリウム ジャポニカム)」という学名を持つように、日本を代表するユリとして世界的に認知されていますが、害虫に弱いため栽培は難しい品種です。
                          いかにもこの花らしい「上品」という花言葉を持っています。

                          サクユリ

                          伊豆諸島に自生するユリです。
                          特徴はなんといってもその花の大きさ。
                          約30センチにも達する大輪は見ごたえがあり、「世界最大のユリ」とされています。
                          原産地の伊豆諸島では「タメトモユリ」という別名で呼ばれることも多く、この名は、保元の乱に敗れて伊豆大島に流された平安末期の武将で、その巨体でも天下に名をとどろかせた、源為朝(みなもとのためとも)に由来しています。

                          ヒメサユリ

                          新潟・山形・福島県境地域の限られた山域だけに原生する貴重なユリです。
                          ササユリに似た淡いピンクの花を咲かせますが、ササユリよりやや赤味の強い花の色が特徴です。
                          また、ササユリの花粉が朱色であるのに対して、ヒメサユリの花粉は黄色です。
                          その可憐な花姿から「オトメユリ」の別名もあり、「飾らぬ美」「純潔」などこの花らしい花言葉を託されています。

                          ウケユリ

                          鹿児島県の請島(うけじま)など、奄美大島から徳之島にかけての限られた島々にだけ自生する貴重なユリで、鹿児島県の天然記念物に指定されています。
                          「ウケユリ」の名は請島にちなんだものです。
                          岩場に白い大輪の花を咲かせ、甘く強い芳香もウケユリの特徴です。
                          特殊な環境に自生するため、一般での栽培には向いていません。

                          タモトユリ

                          鹿児島県のトカラ列島にある口之島だけに原生していた固有種ですが、現在、野生のものは乱獲により絶滅したとされています。
                          その白い花は断崖絶壁で、天に向かって咲きました。
                          球根を手に入れるには命綱で絶壁に下ろされるほかなく、収穫は着物の袂(たもと)に入れて持ち帰ったといいます。
                          そこから「タモトユリ」の名がつけられました。

                          ここまで、日本原種のユリについてご案内しましたが、交配種(園芸品種)のユリの作出は一貫して欧米がリードしてきました。
                          その代表的な品種であるカサブランカについて解説します。

                          “ユリの女王”カサブランカは
                          園芸品種の代表格

                          「ユリの女王」とも呼ばれるカサブランカは、世界的に最も人気のあるユリの品種といっても過言でありません。
                          1970年代の半ば、カサブランカはオランダの育種事業者によって生み出されましたが、 その元となったのは日本産のカノコユリとヤマユリ、そして今は絶滅種となってしまった口之島のタモトユリです。
                          いわゆる「オリエンタル・ハイブリッド」系の交配種の一つです。

                          市場にデビューしたカサブランカは、その気品ある美しさ、上品な甘い香りなどが支持を受け、世界的なカサブランカブームを巻き起こしました。
                          今でも「ユリの女王」の名に違わず、特に贈り物に選ばれるユリの最も代表的な存在として君臨しています。

                          カサブランカは純白の大きな花を咲かせます。
                          花弁の内側にスポット(斑点)がないのがその特徴で、他のユリの品種と比べても特にその白さが印象に残ります。

                          「カサブランカ」にはスペイン語で“白い家”の意味があります。
                          北アフリカの国モロッコにカサブランカという都市があり、ここを舞台にした同名の映画も有名ですが、その白い花の印象から、すでに地名としてよく知られた“白い家”(カサブランカ)の名が用いられたのです。

                          カサブランカには、「純粋」「高貴」「祝福」「無垢」「甘美」「壮大な美しさ」「威厳」などの花言葉があります。
                          いずれも贈り物にふさわしい花言葉です。

                          まとめ

                          ユリについての基礎知識や、種類・分類、日本の原産種などをご紹介しました。

                          より美しいユリの花に出会いたいという人間の願望は、原種の交配による園芸種の作出を推し進め、カサブランカブームを巻き起こすほどの力を持っていました。
                          その礎となったのは日本にルーツがある原産種のユリたちでした。

                          今や豊富な交配種が園芸市場を華やかに彩っていますが、素朴な日本の原種ユリを愛する人たちもたくさんいます。
                          大切なのは、自分が本当に求めているものはなんであるかを知ることです。
                          その道のりで、知識は一つの助けになります。
                          これからも、知的好奇心を磨きながら、自分にとってのユリを、お花を、探し続けていただければと思います。

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