2023/04/02

ピオニー(芍薬)の花を楽しむ!牡丹との違いも解説

初夏を彩る色鮮やかな大輪の花「ピオニー」、一般的には「芍薬(シャクヤク)」の名で知られています。

英語名の「ピオニー」には、「牡丹(ボタン)」という意味もあることをご存じでしたか?
芍薬と牡丹って同じ花だったでしょうか?

この記事では、芍薬と牡丹の違いにも触れながら、芍薬という花について詳しく解説。その魅力を紹介します。

ピオニー(芍薬)の花は
多彩な咲き姿が魅力!

ピオニー(芍薬、シャクヤク)は、中国・シベリア南部・モンゴル・朝鮮半島などの、 北東アジアを原産地とするボタン科ボタン属の多年草です。

草丈は60センチほど、花は直径15センチほどの大輪を開きます。
開花は晩春から初夏(4月〜6月)、5月中旬が見頃となります。

原種から改良された園芸品種が多いのも芍薬の特徴です。
花の色なら主流の赤、白、ピンクのほか、黄色、オレンジ、紫、複色など多彩。
咲き方も、一重咲き、八重咲きのほか、おしべが細長く花弁化する「翁咲き」、おしべが太めに花弁化し黄金色になる「金蕊(きんしべ)咲き」、花が丸く盛り上がる「冠咲き」、バラに似た「バラ咲き」など、さまざまなタイプがあります。

和芍薬(東洋系)、洋芍薬(西洋系)という分類もあり、これも咲き方の違いが大きな目安です。
和芍薬は一重咲きのものが多く、洋芍薬はバラ咲きなどに代表される豪奢な花姿のものが主で、和芍薬に比べて香りも強いのが特徴。
両者の交配による新しい品種も次々誕生しています。

芍薬は観賞の花であると共に、その根は生薬としても古くから珍重されてきました。
漢方の「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」は、腹痛や痙攣痛の鎮めに、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」は婦人薬として処方され、風邪薬としてよく知られる「葛根湯(かっこんとう)」にも芍薬が含まれています。

芍薬が薬としても有用であることは、実は「ピオニー」という英語名の由来にも関わってきます。
どういうことでしょうか?

東西の文化で花開いたピオニー(芍薬)

原産地の中国から芍薬がもたらされたヨーロッパでは、その美しさと共に薬用植物としての価値もよく知られていました。

話はギリシア神話にさかのぼります。
医学の神アスクレピオスの弟子であったパイエオンは、オリンポスの丘で見つけた不思議な植物の根を使い、ゼウスの子を宿した女神レトーの陣痛を和らげました。
パイエオンはゼウスに認められて名声を得ますが、医神アスクレピオスは嫉妬のあまり彼を殺してしまいます。
それを憐れんだレトーはゼウスに懇願し、パイエオンを薬草の姿に変えたのでした。
以来、薬効を持つ不思議な植物はパイエオンと呼ばれ、やがて中国からやってきた芍薬と結び付きます。
「パイエオン(Paeon)」から転じて生まれたのが、英語名の「ピオニー(peony)」です。

芍薬は日本へも、はじめは薬草として奈良時代に中国から伝来しました。
平安の頃からは見て楽しむ花としても好まれ、室町以降は茶道や華道の発達に伴って茶花や花材としても欠かせない花となりました。

江戸時代には武士が園芸をたしなんだ肥後国(熊本県)で、菊、椿、山茶花、花菖蒲、朝顔と並ぶ「肥後六花」の一つとして芍薬が栽培され、古典園芸品種の「肥後芍薬」が誕生しています。

明治期以降は全国で品種改良が進み、さまざまな園芸品種が生み出されています。

どちらも「ピオニー」と呼ばれる
芍薬と牡丹の違い

英語の「ピオニー(peony)」は芍薬だけでなく、牡丹を指しての呼称でもあることはすでに述べました。
植物分類上「ボタン科ボタン属」に属しているのは芍薬と牡丹だけ。
近縁種である芍薬と牡丹は、たしかに花姿が似ており、英語圏では区別することなくピオニーと呼びならわしています。

しかし日本では、 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉が古くからあるように、どちらも美しい女性に例えながら、芍薬と牡丹はあきらかに違うものととらえられています。
芍薬は立ち姿に、牡丹は座り姿に、つまり見た目の違いを認識していました。

では、芍薬と牡丹の違いとは何でしょうか?

根本的な違いは、芍薬は「草」であり、牡丹は「木」であるということです。
芍薬は、地上部が枯れて根だけ残った状態で冬を過ごす「宿根草」。
一方、牡丹は、秋に葉が落ちても樹木として存立する「落葉低木」です。
木ではないことから芍薬には「草牡丹」の別名もあります。

また外見上、もっとも違いが分かりやすいのは葉っぱの形です。
芍薬の葉は全体に丸みがあり、表面には光沢があります。
一方、牡丹の葉には切れ込みが入ってギザギザで、光沢はありません。

その他、蕾(つぼみ)は芍薬が丸形であるのに対して、牡丹は尖っている。
しっかりとした芳香を放つ芍薬の花に対して、牡丹の花は無臭。
花の開花は牡丹が先行し、やや遅れて芍薬が咲き始めるなど、比べてみるといくつも違いがあるものです。

つつましさから生まれた
ピオニー(芍薬)の花言葉

華やかな咲き姿の印象からすると意外ですが、芍薬には「恥じらい」「はにかみ」「つつましさ」「謙遜」などの花言葉があります。
特に欧州では古くから、芍薬にひかえめな存在のイメージを仮託していたようです。

一説には、イギリスに伝わる古い民話がその由来とされてます。
それは、恥ずかしがりの妖精がある日芍薬の花の陰に身を隠すと、恥じらいで赤らんだ妖精の顔の色に合わせ芍薬の花も赤く染まった、というお話です。
英語には、恥ずかしさで顔が赤くなることを、「blush like a peony “ピオニーのように恥じる”」という慣用表現もあります。

芍薬には日が沈むと花を閉じる習性があり、それが恥ずかしがり屋の花というイメージを生んだという説もあります。

また、赤の芍薬には「誠実」「威厳」、白の芍薬には「幸せな結婚」という色の違いによる花言葉もあります。

ピオニー(芍薬)の花は
ガーデニングでも人気!

バラ科に属する「バラ」とボタン科に属する「ピオニー(芍薬)」は、もちろん別種の植物ですが、かつてヨーロッパでは芍薬をバラの一種と考え、国によって芍薬を「山のバラ」や「聖母のバラ」と呼んでいました。

春から夏にかけての花壇を彩る花としても、芍薬はバラと並ぶほどの人気があります。

秋、日当たりのよい場所を選び、よく肥えた水はけのよい用土に苗を植え付けます。
水ぎれと病害虫に注意し、適切なタイミングで肥料を与えて育てれば、春には美しい大輪の花を開きます。
地植えでも鉢植えでも栽培でき、暑さにも寒さにも比較的強いことから、初心者にも挑戦しやすいお花です。

ピオニー(芍薬)の花は
ギフトやブライダルにも最適!

華やかな大輪の美しさは、お祝いごとのお花としても芍薬の真価を高めています。

たとえば母の日では近年、定番中の定番であるカーネーションにも劣らぬ人気を集めています。
5月の第2日曜日は芍薬にとっても花の盛り。
咲き姿やカラーもバリエーション豊富で、選ぶ楽しみもあります。

誕生日のお花としてもおすすめです。
特に芍薬は、カーネーション、スズラン、ピンクのバラなどと並んで「5月の花」とされており、5月生まれの誕生日プレゼントに最適です。
複数の色の芍薬をそろえ、グリーンを混ぜた花束やアレンジメントなどが人気です。

芍薬はブライダル(結婚式)のお花というイメージをお持ちの方も多いことでしょう。
豪華な花姿は晴れの舞台にふさわしく、和風、洋風どちらの婚礼にもマッチします。
特に白い芍薬には「幸せな結婚」という花言葉があり、新婦の清らかなイメージそのもの。
芍薬には「華燭の典」という品種もあり、濃いピンク色の豪奢な花が特徴ですが、こちらもブライダルの花として人気です。
華燭の典とは、結婚式を意味する美称です。

まとめ

ピオニーの呼び名でもおなじみの芍薬について、花の特徴や文化的な背景、花言葉やギフトでも人気のポイントについてお伝えしました。

西洋ではひかえめな花と思われていた一方、見る者すべての目を奪って離さないその華やかさは、近い存在と考えられていたバラにも引けを取りません。

お庭で、ギフトで、ブライダルで、芍薬を見かける機会はたくさんあると思います。
そんなときはぜひこの記事の一端を思い出していただければ嬉しい限りです。

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