2023/04/02

ミモザとアカシアの違い|その背景を解き、知識を深める

花屋や園芸店には「ミモザ」という名の花が並んでいます。
優しい香りを放つ、小ぶりで黄色い花が房状に集まった植物、といえばイメージできる方も多いでしょう。
一方で「それはアカシアの花ですよね」と言う方もいて混乱する場面もしばしば。
いったい、ミモザとアカシアは同じ花?それとも違うものなのか?

実は、同じ花だと言えば言えるし、違うものであるともまた言える、その呼称にはやや複雑な事情が横たわっています。

この記事では、その謎を解き明かしていきます。
合わせて、ミモザ(アカシア)の品種や、花言葉なども紹介。
世界で愛されているこの花の知識を深めます。

ミモザとは?アカシアとは?
その基本的な違い

花街路樹や公園樹としてよく見かける樹木のひとつに、「ギンヨウアカシア(銀葉アカシア)」があります。
早春に鮮やかな黄色い花を開き、「シルバーリーフ」と呼ばれる葉は銀灰色を帯びています。
その特徴が「ギンヨウ(銀葉)」の名の由来でもあります。

庭栽培(ガーデニング)にも適していることから、園芸店やホームセンターでも鉢植えや苗木などでしばしば見かけますが、日本ではその多くが「ミモザ」の名でも取引されています。
しかし、ギンヨウアカシアとミモザがそれぞれの別名であり、つまりは同一の品種なのかと言うと、それも違います。

ギンヨウアカシアは、マメ科アカシア(acacia)属に分類されるオーストラリア原産の常緑高木で、この植物の正式な和名です。
一方、ミモザという呼称は、日本では主にギンヨウアカシアを呼ぶときの通称(流通名)です。
しかも「……アカシア」と呼ばれる他のアカシア属の植物でも「ミモザ」の通称で販売されることがしばしばあり、同じ品種の単なる別名とは言い切れないのです。

整理すると、
「ミモザ」は“アカシア属の総称”であり、日本では主にギンヨウアカシアを指しますが、“アカシア属の個々の品種の別名”としてもよく用いられる名称である。
そう理解しておくのが最も実態に合っているようです。

ミモザは通称、アカシアが正式名。
そこに至った背景

では「ミモザ」という名の植物は存在しなかったのかと言うと、必ずしもそうではありません。
元々「ミモザ」は「オジギソウ」の学名(Mimosa pudica)であり、この植物の通称でした。
その名のとおり、触れられるとお辞儀するように葉を閉じる性質があり、その様子がパントマイムの元となった古代ギリシアの身振り演劇「ミモス」に似ていたことが由来です。

オジギソウは南米原産ですが、古くから世界中に伝播、繁殖していました。
ヨーロッパでは「ミモザ」の名で親しまれていましたが、オーストラリア原産のアカシアが渡来すると、両者の混同が起きます。

アカシアはアカシア属、ミモザ(オジギソウ)はオジギソウ属に類する別種の植物であり、アカシアの花が黄色であるのに対しミモザ(オジギソウ)の花はピンク色です。

アカシアの葉の形は、お辞儀することはないもののミモザ(オジギソウ)によく似ており、ヨーロッパではこの植物を“ミモザに似たアカシア”の意味で「ミモザアカシア」と呼ぶようになります。
それが、いつしか略称の「ミモザ」の名が定着しました。
元々はオジギソウの正式な学名であった「ミモザ」が、別種の植物であるアカシアの通称となったのです。

なお、アカシア属の中でも、日本ではギンヨウアカシアを「ミモザ」と呼ぶケースが多いですが、欧米ではフサアカシアを指して「ミモザ」と称することが一般的です。
オジギソウに似ている「ミモザアカシア」の名で、最初に呼ばれたのもフサアカシアであったとされています。

多彩なミモザ(アカシア)の
品種から代表的4種を紹介

ミモザ(アカシア属)に分類される植物はたいへん多く、世界に約1000種ほどあると言われています。
ここでは、日本で見られるミモザ(アカシア)の代表種であるギンヨウアカシア、欧米で主流のフサアカシアと、人気のあるパールアカシア、サンカクバアカシアについて詳しく紹介します。

ギンヨウアカシア(銀葉アカシア)

美しい銀灰色の「シルバーリーフ」が特徴です。
その形状は「羽状複葉(うじょうふくよう)」と呼ばれ、小葉が葉軸の左右に並び、繊細な鳥の羽を連想させます。
その葉の独特の風情は、花期を過ぎても一年を通して楽しむことができ、庭木として人気があります。

鮮やかな黄色の花は早春に房状に咲きます。
満開になると樹木全体を黄色が覆い、美しさが際立ちます。

ギンヨウアカシアはまた、さまざまな花卉関連の商品や、切り花や押し花、ドライフラワーの素材にもよく用いられます。
国内で「ミモザアカシア」の名で流通しているものの大半はギンヨウアカシアです。

フサアカシア(房アカシア)

葉の形状はギンヨウアカシアと同じ「羽状複葉」ですが、ギンヨウアカシアに比べ格段に長い小葉を持ち、数も多く、濃い緑色。
その手触りはギンヨウアカシアに比べふかふかと柔らかいのが特徴です。

花は色も形もよく似ていますが、ギンヨウアカシアに比べて大ぶりで、咲き始めが早いのが特徴。
また、ギンヨウアカシアにはない濃厚な香りを有しており、香料の原料にもなります。

樹高も高く、成長したギンヨウアカシアが5〜10メートル程度なのに対して、フサアカシアは10~15メートル。
原産地のオーストラリアでは25メートルを越える木も自生しています。
その大きさゆえに個人の庭では育てにくく、日本では公園などの植栽で見かけることが多くなります。
フサアカシアではなく、日本でギンヨウアカシアが主流になったのも、育成のしやすさを求めたことが一因です。

パールアカシア

ユーカリに似た丸みを帯びた葉の形が特徴的で、「マルバアカシア(丸葉アカシア)」の別名があります。
また、その葉色は真珠を思わせる質感のあるシルバーリーフで、「シンジュバアカシア(真珠葉アカシア)」とも呼ばれます。

花の色は薄めのレモンカラー。
アカシアとしては小型で育てやすく、庭木だけでなく鉢植えでも人気です。

サンカクバアカシア(三角葉アカシア)

その名の通り、ユニークな三角形の葉を特徴とするミモザ(アカシア)です。
その形をナイフに見立て、英語では「Knife-leaf wattle(ナイフリーフ・ワトル)」と言います。

ギンヨウアカシアより遅咲きで、花色は黄色。
甘い香りを放ちます。
株元から時間をかけて広がるように成長しますが、樹高は低い矮性種で、地植えにも鉢植えにも適しています。

想いを受け継ぐミモザ(アカシア)の
花言葉

ミモザ(アカシア)と呼ばれる花には、「優雅」「秘密の恋」「豊かな感受性」などの花言葉があります。

「優雅」という花言葉の由来は、その花姿です。
丸く黄色い小さな花がたくさん集まって、ふんわりと房をなすそのさまにふさわしい言葉と言えるでしょう。

「秘密の恋」という花言葉は、愛の告白にミモザ(アカシア)の花を渡したという、アメリカ先住民(アメリカインディアン)の習慣に由来しています。
原産地であるオーストラリアの先住民(アボリジニ)の習慣であるという説もあります。

「豊かな感受性」は、「ミモザ」が元々はオジギソウの呼び名であったことの名残です。
わずかに触れただけでも葉を閉じる(お辞儀をする)性質が、豊かな感受性を持つ植物という印象を与えました。
オジギソウの英語名の一つに“感じやすい植物”を意味する「Sensitive plant 」があります。

その他、ミモザ(アカシア)全般の花言葉には、「友情」「堅実」「神秘」「思いやり」などがあります。

また、黄色以外の花を咲かせる品種については、「頼られる人」(白い花)、「エレガント」(オレンジの花)などの花言葉もあり、イタリアでは「感謝」の花言葉を大切にしています。

想いのこもった多彩な花言葉が受け継がれてきたように、ミモザ(アカシア)は古くから愛されてきた花です。
その一端を、次項で紹介します。

ミモザ(アカシア)にちなむ
世界の3つのイベント

日本では、春になると桜の「お花見」をしますが、世界的にはミモザ(アカシア)が春を告げる花の代表格。
ミモザにちなんだ祭典は各地で行われています。
ここでは、代表的な3つのイベントをご紹介します。

フランスの「ミモザ祭り」

南フランスのリゾート海岸地域、コードダジュールに位置するモンドリューラナプールでは、毎年2月に「ミモザ祭り」が開催されます。
地元で栽培されたミモザで飾り付けた山車(だし)が街を練り歩く、「フラワーパレード」がいちばんの見どころ。
「ニースのカーニバル」「マントンのレモン祭り」と並ぶ「南仏三大祭り」に数えられています。

オーストラリアからフランスに最初のフサアカシアがもたらされたのが、コードダジュールでした。
温暖な気候がミモザに合っていたことから栽培が盛んとなり、モンドリューラナプールは現在まで主要な産地の一つとなっています。
ボルムレミモザを起点に、モンドリューラナプールを経て、香水で有名なグラースに至る「ミモザ街道」は観光ルートとしても人気です。

オーストラリアの「ワトル・デー(アカシアの日)」

アカシア類を総称し、欧米や日本では「ミモザ」と呼びますが、オーストラリアでは「ワトル」です。
南半球にあるこの国では、ワトルの花の盛りは9月。
毎年9月1日は、「ワトル・デー(アカシアの日)」と呼ばれる国家的なお祝いの日にあたり、人々はワトルの花や枝を身につけて冬を見送り、春を迎えます。
国花(国の花)は「ゴールデンワトル(ピクナンサアカシア)」ですが、この日に身に着けるワトルはどの種類でもよいことになっています。
ゴールデンワトルの葉と花の色にちなんだ「緑とゴールド(黄色)」はオーストラリアのナショナルカラー(国の色)であり、ラグビーの強豪として有名なオーストラリア代表チームである、ワラビーズのシンボルカラーにもなっています。

ミモザの日(国際女性デー)

3月8日は国連の定める「国際女性デー」です。
差別のない平等な社会で女性がより輝けるようさまざまな提言がなされます。
発端となったのは、1904年の3月8日にニューヨークで起きた、女性が婦人参政権を求めて起こしたデモです。
1910年の国際会議で、3月8日が「女性の日(女性の政治的自由と平等のためにたたかう日)」に制定され、1917年のロシア「二月革命」では、女性労働者が3月8日(旧ユリウス暦の2月23日)にデモを起こしました。
その後も女性の社会参画を求めるムーブメントは連綿と受け継がれ、1975年、国連は毎年3月8日を正式に「国際女性デー」と制定しました。

春になると男性が女性にミモザ(アカシア)の花を贈る習慣があるイタリアでは、1944年に「女性組合(UDI)」が発足、1946年に初めて女性の参政権が認められたことをきっかけに、ミモザを「女性の日」のシンボルに選びました。
現在「国際女性デー」となった3月8日は、イタリアでは「ミモザの日」と呼ばれます。
愛する女性にミモザを贈る昔ながらの習慣はもちろん、お世話になっている身近な女性にもミモザを贈ったり、いわゆる女子会なども多く開かれ、この日イタリア全土がミモザカラーの黄色に染まります。

ミモザをシンボルに女性を称え、その地位向上をめざす「国際女性デー」の過ごし方はイタリアから世界に広がり、近年は日本でも定着しつつあります。

まとめ

アカシアがミモザと呼ばれる複雑な背景についてお話ししました。

同様の混乱は、実は日本でも起きています。
往年のヒット曲「アカシアの雨がやむとき」や、北原白秋作詞の「この道」に歌われているのは、本当はアカシアではなく「ニセアカシア」だと言うのです。
ニセアカシアは正式な和名を「ハリエンジュ」と言い、初夏に白い花をつけます。
日本へはミモザ(アカシア)に先んじて輸入され「アカシア」の名で普及しました。
のちに本来のアカシアがもたらされましたが、両者は混同されたまま現在に至っているのです。

正式名称と通称(流通名)の混用・誤用は、花卉園芸の世界ではしばしば起きることですが、今回ご紹介したミモザとアカシア、そしてニセアカシアのような、複雑なケースは珍しいと言えるでしょう。
それだけにまた、興味が尽きない花でもあります。

南欧では、まだ肌寒い早春に輝くように咲き誇るミモザを「冬の太陽」と呼びます。
太陽のように愛されてきたこの花に少しでも関心を持っていただけたなら、フラワーショップで切り花を購入、観賞してみてください。
輝くような黄色やシルバーリーフの深遠な緑が、さらなる好奇心を刺激してくれるかもしれません。

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