あじさい(紫陽花)は日本の夏を彩ってくれる花です。梅雨頃になると、家の庭や植木鉢などから色とりどりの花を咲かせてくれるので、季節を感じさせてくれる風物詩の一つとして人気。
そんな夏のイメージが強いあじさいですが、ガーデニングで育てる際には、夏よりもむしろ「冬」のお手入れを重視する必要があることをご存じでしょうか。
あじさいは決して冬に弱い種類ではありませんが、それでも環境によっては冬を越せずに枯れてしまったり、冬に受けたダメージが原因で翌年に元気な花を咲かせられないことも。
あじさいを育てるうえで、冬のお手入れはとても大切です。
本記事では、そんな冬に必要なお手入れや世話の方法などを見ていきましょう。これからガーデニングであじさいを育てたいと思っている人は必見の情報です。
冬のお手入れが超重要!あじさいの特徴とは
あじさいは広く知られている植物ですが、生態を詳しく把握している人は少ないのではないでしょうか。ここではあじさいの基本的な特徴を確認して、なぜ冬の時期のお手入れが大事になってくるのかを見ていきましょう。
あじさいの基本情報
あじさいは日本原産の植物です。
日本に自生していた植物ですが、観賞用にヨーロッパへ株が渡ったことから多数の品種が開発されていきました。個性的な品種が数多く栽培されるようになってから逆輸入される形で日本へと戻って来たという歴史を持つ植物です。
品種によっても多少変わりますが、あじさいは5月頃から7月頃まで花を咲かせる植物です。あじさいの色鮮やかな花を見たことがある人も多いでしょう。
一般的にあじさいの花と思われている箇所の大部分は、葉が変形した「ガク」と呼ばれるもので、実際の花はガクの中心部にあります。ただ、あじさいはガクを含めた全体を花房と呼ぶこともあり、本記事ではガクを含めて「花」と呼びます。
あじさいは地上5mほどまで成長し、順調に育てば毎年花をつけます。暑さと寒さの両方に比較的強い植物なので、家の庭に植えて彩りとするご家庭も多いです。
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あじさいの冬の姿
そんなあじさいの特徴の一つとして、「休眠期」と呼ばれる独特な冬の姿が挙げられます。休眠期とは、動物でいう冬眠と同じ状態と考えてください。
あじさいは花を咲かせ終わって11月頃になると次々と葉を落とし始めます。この時、枝の先端にある花芽(後に花を咲かせる芽)は伸びていますが、これも12月になると完全に止まります。そうして、枝だけを残す寒々しい姿となってしまうのです。
冬に休眠期が必要な理由は、株の体力回復のため。あじさいは夏のあいだ多くの花を咲かせますが、これには多大なエネルギーが必要。そこで、日光が少なく光合成の効率も悪い冬は葉を落として活動をやめ、消費したエネルギーの回復に専念するのです。
そのため、冬に枝だけの姿となったあじさいは枯れてしまったわけではなく、翌年に花を咲かせる準備をしています。
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あじさいの冬越しに適した環境は?風・乾燥・極寒はNG
では、冬のあじさいはどのような環境で育てればよいでしょうか。鍵となるのは風と温度です。
人間でも風が当たると体感温度が下がるのと同様に、植物も必要以上に風に当たると温度を奪われてダメージを受けます。特にあじさいは冬に弱く、冷たい風に当たりすぎると翌年以降の花付きが悪くなることがありますので、十分注意しましょう。
こういった理由から、風が通る屋外からあじさいを移動させましょう。地植えしている場合は無理に植え替えなどをする必要はなく、「寒冷紗」や「防風布」など植木用の風よけネットを使用しましょう。
屋外であじさいの鉢植えを移動させる場合は、風を避けられる半日陰を探しましょう。日当たりをそれほど重要視しなくてもよいので、屋内の窓際なども良い場所です。とにかく吹きさらしを避けましょう。
また、冬は乾燥にも気をつける必要があります。あじさいは乾燥を嫌うので土が何日間も乾いたままになっているような状態は避けましょう。
特に、お住まいの地域で真冬の最低気温がマイナスを下回るなら、積極的に室内へ入れてあげてください。たとえ寒さに強い植物であっても屋外で雪が降りかかるようだと根にダメージが蓄積してしまいます。
【鉢植え】あじさいが冬を乗り越えるための具体的なお手入れ方法
冬に強いあじさいであっても小まめな手入れがなければ次の年に咲かせてくれるかどうかわかりません。綺麗な紫陽花を毎年楽しむためには、あじさいが休眠する冬の期間の正しいお手入れが重要です。まずは、鉢植えであじさいを育てている時のことを考えましょう。
水やり
鉢植えであじさいを育てている場合には小まめな水やりは欠かせません。これは春や夏から共通していることなのですが、土が乾燥したらたっぷりと水をあげるようにしましょう。冬場であっても乾燥させてしまうとあじさいの状態が悪くなってしまいます。
水をあげるタイミングですが、必ず午前中の陽が上ってからの時間にしましょう。冬場の水やりは間違えたタイミングで行うと根を傷めてしまう恐れがあります。夕方や夜になっても根の近くに水分が残っていると、水分が根の温度を奪ってゆくことで根を腐らせてしまう「根腐れ」を起こしてしまいます。
水やりを行う時間にも気をつけるようにしましょう。
お手入れ
冬の間にできるお手入れとしては鉢の植え替えと剪定です。必ずやらなければいけないわけではありませんが、花の見た目を大事にする人にとっては欠かせない作業です。
鉢を植え替えする理由には、土の交換と根詰まりの解消があります。
あじさいのように生長が早い植物はすぐに土壌の栄養分を吸い上げてしまいます。根が伸びるのも早いので鉢の中で行き場をなくして絡み合ってしまいます。栄養分がなくなると花の付き方や芽の伸びも悪くなってしまいますし、根詰まりが起きると成長が止まってしまう恐れもあります。
2・3年に1回は鉢を変えてあげて成長しやすい環境を作ってあげましょう。鉢に入れる土は水はけの良いものを使い、鉢の底面には水が抜ける穴が開いているものを選びます。
また、見た目をよくするためには剪定が必要です。冬の間の剪定では古くなった細い枝や内向きに生えて内部を蒸れさせてしまう枝などを根元から切っていきましょう。
ただ、花芽は枝の先端についているので、枝の先端を落としすぎると来年から咲く花が減ってしまいます。適度に枝をカットしましょう。
特に寒い地域では、鉢を二重にして保温効果を高めることも有効です。
【庭植え】あじさいが冬を乗り越えるための具体的なお手入れ方法
あじさいは家の庭に地植えをして楽しまれることも多いです。地植えであれば比較的世話が楽になることから、初めは鉢植えで育て、大きくなったあじさいは庭植えにして楽しむことも多いようです。では、庭植えのあじさいと鉢植えのあじさいでは手入れにどのような違いがあるでしょうか。
水やり
庭植えにしているあじさいは鉢植えに比べて細かな水やりが必要ありません。春から秋にかけては自然任せで基本的に問題ありません。ただ、一週間程度乾燥した状態が続くようであれば地面全体に水をまいてあげましょう。
冬になって枝だけの姿になってもあじさいは水を必要としています。あまりにも乾燥が続くようであれば午前中の明るい時間に水をあげましょう。
お手入れ
庭植えのあじさいは屋外にさらされることになります。冬の屋外で植物にとって怖いものは霜です。早朝に霜が降りるとあじさいの表面が極端に冷えてしまいます。毎日霜が降りているとあじさいに負担が蓄積して、いずれ枯れてしまう可能性が出てきます。
霜が降りるのを防ぐために、あじさいを植えている付近にスペースがあれば支柱を立てて、不織布などであじさい全体を覆いましょう。これによって、あじさいの表面に霜があたらなくなります。
また、根を張っている周辺地面にウッドチップなどを敷いて地面が冷えすぎてしまうことを防ぐことも有効です。住んでいる地域の気候に合わせて対策を考えましょう。
あじさいが冬を越すためには欠かせない!お手入れの注意点
あじさいが丈夫に冬を越すためには様々な対策が必要になることはわかっていただけましたでしょうか。自分の住む地域や楽しみ方によっても必要な手入れは変わってきます。
その中でも特に大事になる手入れの際の注意点を確認しましょう。
注意点�@:絶対に風に当てない
上でもご紹介したように、あじさいは葉を落として休眠することによって冬の寒さをしのぎます。しかし、冬の間に植物の中に負担が蓄積していると、春から十分な成長ができません。
特に、風が当たる環境では乾燥するうえ気温が下がりやすく徐々に弱っていってしまいます。
屋外で育てていて特に注意しなければいけないのは、自然の風だけではなくエアコンの室外機も同様です。
室外機から出る風が周囲の植物を枯らしてしまうのはガーデニングでよくある話。庭植えにする際には室外機の周囲は避けましょう。
鉢植えであれば、屋内に入れてしまうのが一番安全です。ただし、急に環境を変えると枯れてしまう恐れもあるので、徐々に環境に慣らしましょう。
注意点�A:寒肥を忘れずに
基本的に、あじさいは肥料が無くても十分に育ちます。しかし、肥料があると春からの成長を促すことができるので、花を大きくしたり、あじさい全体の成長を促すことができます。
冬の期間にあじさいへ肥料を与える場合、11月から2月の間の休眠期の間に「寒肥」と呼ばれる肥料を使用します。この寒肥で一般的なものは油かすなどが含まれている有機肥料一般的です。
この寒肥は緩効性肥料という徐々に土壌に浸透していくタイプのものです。あじさいが休眠期にある間に土壌の性質を改善することで次の開花が豊かなものになります。
これは鉢植えであっても庭植えであっても有効なので、花のボリュームに物足りなさを感じていたなら、寒肥を導入してみましょう。
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冬越えしたあじさいでつくる生命力感じるフラワーギフト
様々な植物がつけた花は植物についている間だけしか楽しめないわけではありません。花を活かした様々な物への応用に使うことができます。様々な楽しみ方を試してみましょう。
切り花にいける
たくさん咲いた花を切り花として室内を彩っても良いでしょう。花屋によっては輸入されたものを使って1年のうち長い期間であじさいの切り花を用意している場合もあります。これらのお花屋さんを上手く使えば、一年中あじさいを楽しむこともできます。
切り花を活ける際には同系色でまとめたあじさいを適度な高さの花瓶に差してあげましょう。自分であじさいを切る時の注意点としては、茎の下処理を丁寧にすることです。
あじさいの茎の中にはワタが入っていますので、茎の吸水をスムーズなものにしてあげるために茎を斜めに切り、中のワタを抜いてあげましょう。茎を水の中に入れた状態でハサミで切ってあげると、内部に気泡が入らないので吸水がよりスムーズになります。
ブーケにする
あじさい単体の切り花だと寂しいイメージを持ってしまうかもしれません。そこで、いくつかの花と組み合わせて作るアレンジブーケが可愛らしいかもしれません。
おススメなのはあじさいの他に「バーゼリア」や「ビバーナム・スノーボール」などを組み合わせたブーケです。
ブーケを作る際には用意した花材を全て同じ長さに切ります。バーゼリアを中心に置き、あじさいとビバーナム・スノーボールが対角になるように組み合わせます。茎の上のほうを縛ったあとは花全体が丸くなるように調節しましょう。
茎の部分にリボンなどをあしらえればよりブーケらしくなるでしょう。
人への贈り物として作るのも良し、食卓の飾り物として花瓶などに差して置いておくのも良いかもしれません。
ドライフラワーにする
切り花やブーケでは、いずれ枯れていくのが辛いという人もいらっしゃるでしょう。
しかしドライフラワーなら、長い間色合いや花の形を楽しむことができます。ドライフラワーと聞くと作るのが難しそうなイメージがありますが、実際はそうでもありません。
用意するものはあじさいと麻紐とテープだけ。ブーケ状にまとめたあじさいの花をテープで麻紐にくくって、逆さにして吊るしましょう。
1週間ほど干すとドライフラワーが完成します。花を逆さにすることが形を崩さないようにするコツです。簡単に作ることができるので、アンティークの1つとして採用したいですね。
関連記事:紫陽花(あじさい)のドライフラワー 手作りも簡単!
まとめ
あじさいは夏を感じさせてくれる植物でありながら、夏に元気な姿を見せるためには冬の間の小まめなケアが欠かせないということを解説してきました。
ガーデニングであじさいを育てたいと考えている人は、今回ご紹介したようなポイントを押さえながら、ぜひ今年から挑戦してみましょう!